「一緒に飲もうやー」
と、家出した来たナタリーさんが、テーブルに緑色の瓶をずどんと置いた。極上のポートワインだ。
独身の僕と人妻のナタリーさんは出会い系サイトで知り合って、地域が近いこともあって度々会っている。
もちろん、肉体関係もあるのだが、不思議と恋愛感情はない。僕も彼女も気分によってはセックスはするものの、そこまで性に対して貪欲ではないことが大きな理由だろう。
じゃあ、なんで人妻の彼女とリスクを冒してまで会っているの?と聞かれると、答えは簡単。ナタリーさんの方から「家出してきたー」と、家に押し掛けてくるのだ。
家出の理由も単純明快で「旦那が出張でヒマだから」に尽きる。そう言うのは家出と言うのだろうか?
そんなナタリーさんが、僕のどこを気に入ってくれたかはわからない。
「私、本当は若い頃のアランドロンと結婚したかったんだよね」
ナタリーさんはそう言うと、なみなみ注いだポートワインをグイっと飲んで、くーっと全身を駆けるアルコールの心地よさに身を震わせた。
「太陽がいっぱい!今まで最高の気分だ!」
今、夜ですけどね。と僕は冷静にツッコミを入れる。
ワリキリの相場
「旦那もねえ、若い頃はアランドロンっぽいところがあったんだけど、年取るともうダメね。どんどん幻滅していく」
そりゃあ、フィルムの中のアランドロンは劣化しないのだから、比較されると彼女の旦那もかわいそうだ。
それもあって、ナタリーさんは出会い系でアランドロンを探しているようだが、そんなところに入り浸っている男どもがアランドロンなわけがない。仮にいたとしても、老けたナタリードロンに手を付けるアランドロンはおるまい。
そして、家出してはいろんなところに泊まり歩いているようだが、結局は僕のところにやって来る。
今はアランドロンも引退した単なるおじいちゃんだ。ナタリーさんが今のアランドロンも好きならば本物だが、決してそうではあるまい。彼女のあこがれは、僕たちの生まれる前に若者だったアランドロンだ。
・・・変わらずに生きて行く為には、自らが変わらなければならないんじゃないですか?
しれっと頭に思い浮かんだアランドロンのセリフを言ってみると、ナタリーさんは目を輝かせた。
「そういうセリフを真顔で言うから、君のこと好きなんだよ」
僕もその当時の女優が好きで、DVDをあらかた見ている。彼女がちりばめるアランドロンネタについていけるのは僕くらいかもしれない。
グラスにはもうお酒はほとんど残っていなかった。ちなみに、そのお酒を飲み終わった時どうなるか、映画を見ていればわかるよね。
JCとの援交
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